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第1 回 未生流傳書三才の巻 《序説解説》 

  • 未生流東重甫
  • 2024年5月20日
  • 読了時間: 4分

2024年3月 未生流傳書三才の巻 《序説解説》


未生流の伝書は、「三才の巻」、「体用相應之巻」、「原一旋転之巻」、「草木養の巻」、「妙空紫雲の巻」、「規矩の巻」そして門外不出の「匂いの巻」と全部で7巻ありますが、匂いの巻までの伝書6巻は師範の免状取得までに拝受することができます。未生流でいけばなを始めてすぐに入門・初伝と拝受すると、「三才の巻」を拝受します。師範にいたるまでに6巻の伝書を拝受し、中伝で「体用相應之巻」、奥伝で「原一旋転」と拝受できますが、その内容について教示される機会が残念ながら無いのが現状です。当然、いけばなの稽古として、時折花材・花器に伴って伝書の内容について断片的な説明を受けることはあっても伝書全体の内容に及ぶことはありません。

 このような状況を鑑みて、新しく始める毎月コラムのシリーズでは伝書講義として伝書の内容を説明していくことにしました。普段の稽古では、時間の制約もあり先生に直接訊きづらいかとは承知していますが、支部の研究会や家元研究会ではぜひ質問する勇気を持っていただければと思います。


さて、今年最初の言葉として「孔子の九思」を紹介しましたが、簡単な言葉に訳された中に、教える立場として日頃忘れがちである大切な要素含まれています。

九思とは、「ものを見るときは はっきり見る」「聞くときは 誤りなく聞く」「表情は穏やかに」「態度は上品に」「言葉は誠実に」「仕事は慎重に」「疑問があれば質問する」「みさかいなく怒らない」 そして「道義に反して利益を追わない」の9つの思想です。

思い当たる、また、よく見かける言葉があります。個人的には、歳のせいにしがちですが早合点して「聞くときは誤りなく聞く」等は耳が痛い気がします。


まず、通読して頂きたい「伝書三才の巻」や「挿花百練」には未生流いけばなの「大意」といったような思想や歴史を感じさせる文言が多くあります。200年もの長い間伝えられているため、時代背景を考えると少し難しくもありますが、ともすれば忘れ去られてしまいそうないわゆる人倫の法として飛鳥時代には取り入れられていた思想があります。


千年の時代を経て五常「仁礼信義智」は、いけばなの先哲がまず取り入れた思想です。陰陽五行といけばなの関わりはこの五常からともいわれています。

陰陽、虚実、右旋左旋等多くの考え方を含む陰陽五行の思想をいけばなとの関わりあるところから説明することでいけばな全般に示されている大意を感じていただければとおもいます。


ところで、三才の巻を理解するためには三才とは何であるかを理解する必要があります。

三才とは、天・地・人であり、「三材」とも書きます。中国古代に起こった思想の1つで、三才の道とも言われています。辞典等には三才について以下のような記載があります。


天、地、人を指し、それぞれ完結した世界を形成しながら、相対応して同一の原理に支配されているという思想のことであり、明確には荀子の天編論から始まり、周易に図式化されて定着している。(ブリタニカ国際百科辞典より)。


天・地・人の称。三元、三儀、三極とも(デジタル大辞泉)。


一方でいけばなにおいての三才は、以下の通り、順位、区別を表わし、いけばなの思想性を示す言葉であり、天は「導くもの」、地は「従うもの」、人は「和するもの」の意とそれぞれ考えられています。


太極の混沌から、軽いものが上昇し天となり、重いのは下降して地となった。それが一陰一陽である。天と地の間に、調和させる森羅万象が生じ、その代表が万象・万物の霊長としての人である。 (大井いけばな辞典)


最近、やっといけばなの歴史の中での思想や創造に対しての知識を求める人が少しではありますが出てきたような時代です。今ここでいけばなの思想の根本を周知しておかなければ次の時代では潰えてしまうといった畏れすら感じます。

来月より三才の巻の序説から言葉の意味等について説明していきますので、皆さんが少伝書三才の巻が読みやすいと少しでも感じつつ、伝書についての理解を深めるための何かの役に立てば幸いと思います。

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