2019年4月のコラム 住空間の花
2018年10月より、これまでの教室からNHK文化センター青山に移転し、新しく未生流いけばなの講座を始めました。昭和の時代と異なり、いけばなに割く時間がなかなか取れなくなってきていますが、家に花を飾ることは意外と欠かさず自然と季節の花を愛でているのが現状です。そこで、いまさらいけばなをするのは…と思っておられる方にも気軽に学ぶことが出来る場を持ちたいと思い、「住空間のいけばな」講座を新設しました。
今月は、この住空間の花について簡単に説明していきます。
未生流いけばなでは、大別して、格花、新花そして造形を学びます。格花は、1807年流祖一甫により創流されて今に至る伝承の花のことです。一方で新花は、明治になってから土佐藩・漢文学を修めた細川吾園(潤次郎)らが始めたものです。細川吾園全集(明治10年刊行)には、洋行して学んだフラワーアートの影響を受け、『瓶花挿法』といういけ方が記されており、この時代から諸外国のフラワーアートを学び、日本の新しい花を模索していたことがうかがえます。その後、多くのいけばな家により発展し、1930年頃には「新興いけばな宣言」が成され、急激な発展を遂げています。
未生流では、大正期に新花を取り入れ、昭和から本格的に流派の考えを打ち出しました。基本の形から主に木物の表現法を学ぶ個性手法、草花の色を表現する色彩手法、植物に潜在する美を表現する造形手法が打ち出され、最終的に植物を使った空間デザインである造形まで含めて新花として学ぶようになりました。
新花は、時代相応に発展していくものであり、和から洋へと急激に変化した現在の生活空間における花とはどのようなものか、と考える必要があるのではないかと感じています。未生流新花で学んだ表現法を住空間の花・暮らしの花としての表現とはどのようなものかについてつづっていくことにしました。
フラワーアレンジメントでは物足りない。格花で学んだ植物の「生態」と「らしさ」、新花で学んだ表現法を屈指して、今の住空間での花としていけます。生活空間の中には、様々な空間があり、その空間に似合う、欲しいいけばながあります。それゆえに空間の色彩・形の組み合わせなど理解し、いけばなを添えることで心和み、季節を感じ、お客様の饗応(おもてなし)にもなる花を求めます。
花は主役ではありません、むしろ引き立て役ではないかと思います。「おもてなし」と同じく目に見える技巧は必要なく、いけばなである以上その植物を活かす事が第一であり、それと同時に空間での自然な姿が望まれます。植物の持っている美しさを引き出しながら、やすらぎ空間を求めてデザインします。
まずは、一輪挿しを楽しむような花をいけてみましょう。
その草木の持つ美しさ、特徴を表現しながらデザインします。そこに制限はありません。どんな所に飾るかを考え、姿を決めて表現します。ただし、いけばなである以上、花材は季節の物がいいでしょう。器はいける空間を考え、なるべくシンプルで、色形が目立たないものがふさわしいと思います。もちろん、住空間ですから安定感も必要です。また、大きいものは必要ありません。なお、花材の足元を隠す必要もありません。器から出る足元から先端までの動きや流れが大切です。出来る限り、その空間に溶け込むようないけばなにしましょう。