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未生流東重甫

12月の花:南天(ナンテン)


2018年12月 今月の花 <南天(なんてん)>

京都の晩秋は美しい!特に生まれ育った嵯峨野・嵐山は格別です。人で賑わう名所は数えきれない程ありますが、どこもかしこも賑わっています。

錦秋の京都も朔風に舞い散る枯葉で木々の様相を変えていきます。

24節気の仲冬にあたる11月節は大雪(12月7日~21日)、11月中は冬至(12月22日~翌年1月4日)までとなります。新暦12月の別名は、和名では、師走、除月、極月、親子月、弟月、春待月、梅切月、三冬月、暮古月、限月等、漢名には大呂、季冬、暮冬、晩冬、杪冬、窮冬、黄冬、氷月、蜡月、涂月、蝋月等があります。

何かしら慌ただしく過ぎていく12月の行事の中で、生け花に関連するものとしては、三才の巻に次の記載があります。

「冬至」梅を挿ける。応合いは欵冬花(ふきのとう)又は全ての実物類よろし。

「乙朔日」12月1日。梅、椿このほか春めきたる花を挿くべし。

「事始め」12月13日。梅に歯朶(しだ)を応合いて神に奉るべし。 

「下元」12月15日。楪に万年青(おもと)、藪柑子(やぶこうじ)など応合いて神に奉るべし。

現在も行われている行事では特に事始めではないでしょうか。京都では舞妓はんが師匠のところへ「おめでとうはんどす」と年始の挨拶。祇園界隈を回る舞妓はんの声が初々しいです。

平成最後のお正月を迎えるに当たり、災難の多かった今年を振り返ってみると来年こそはという気になります。そこで今月は「難を転じて福となす」の縁起木である南天(なんてん)をご紹介します。

<南天(なんてん)>

南天は、被子植物、真正双子葉類、キンポウゲ目、メギ科、ナンテン亜科、ナンテン属、ナンテンに分類される常緑低木です。学名をNandina domestica、英名がheavenly bamboo、

別名にはなつてん、なむてん、なりてん、らんてん、大椿、天竹、天燭、南天竹、南天竺、南天燭、南竺、南草木、南燭、南読、南讃、枝子、烏草、烏飯子、烏葉、黒飯樹、惟那木之王、楊桐草、独日、闌天竹などがあります。

花は6月頃、大型の円錐花序を出し小さな白い花を多数つけ、がく片は多数で花弁は6枚です。果実は丸く赤色で、果実の白いものを白南天と呼びます。

なお、ナンテン属は南天一種のみを含み、メギ科では花被、花粉、胚珠、染色体数で他の属と異なる為に別の科とする見解もあります。このメギ科とは「美しいものには棘がある」の諺を持つ植物に入れて良いものではないかと思います。メギ(目木)とは棘は鋭く、ヨロイドオシ、コトリトマラズの別名を持ち、メギのお箸で食事をすると眼病に良いとされています。

また、ナンテンの果実は「南天実」という生薬で、咳止めの効果があります。シロミナンテンが良質とされる。

茎はなかなか肥大しませんが、太くなったものは床柱にされることがあり、京都の金閣寺のものが有名です。また、南天は藤原定家の日記である「明月記」(1180~1235年)にはすでに庭に植栽した記述があります。古くから園芸品種として栽培され、江戸時代には特に盛んで、葉が糸状の「錦糸南天」など多数の品種がつくりだされました。文政年間の「草木錦葉集」には42種、明治時代にまとめられた「南燭品彙」(1884年)には104品種にのぼりました。

<いけばなと南天>

 南天について、複数の書物に様々な描写がされていますが、いくつか例をあげてみます。

「悪魔降伏の木なりとて、世間疾病はやるときに門屋入口にてこの葉つる。」(目録指南鈔)

「不浄けがれを祓うもの。」(立花草木集)

「あしき夢を見たるときたつる」(仙伝抄)

「結び南天」といい、幹を輪に結び、その輪に難を転ずる意を象徴させるいけ方がありますが、未生流では伝書体用相応の巻「木物揉め方の心得」「花首揉め方伝ある品の心得」「実物取扱いの心得」に扱い方の説明がありますので参考にしながらいけてください。

幹は揉め難いものですが、しっかりした和紙に食酢を浸みこませ火に焙りながら揉め、冷水に浸します。最近出回っている南天は実着きが良いのでそのままいけることが出来ますが、実の着きが悪い場合は口傳(口伝(くでん))があるので確認しましょう。また、実はほとんど同じ大きさで陰陽がないので、鳥が啄んだような傷をつけて陰陽とします。

水揚げはほとんど必要ありませんが、どのような花材にも言えることでもある「水から長時間揚げない」「風にさらさない」などは常に心掛けてください。横にった葉が力強く、幹の味もありますので水仙や寒菊などを応合っていけると風情が出ます。

実はなりませんが、姫南天は葉も小さく、幹も細いので格花にも使いやすい花材です。正月頃に葉、実ともに美しい花材です。木の持つ意味からもぜひいけて頂きたい花材の1つです。

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