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未生流東重甫

9月の花:鶏頭(ケイトウ)


2018年9月の花 ≪鶏頭(けいとう)≫

9月の声を聴くと流石に秋を連想します。昼間の暑さが和らいだ訳ではありませんが、朝夕の清々しさは心地よいものです。そして、いつの間にか、木々の葉が緑濃くなっていることに気がつきます。新緑の活き活きした姿からしっかり枝葉を張って太陽と戯れ、落葉の木はもう秋装備しているのか、一番先に七竃が紅葉する時期を計っている様でもあります。

実は暦の上では秋真っ只中。24節気での季節は仲秋、気節は8月節白露(9月8日~)、8月中秋分(9月23日~10月7日)で、白露(はくろ)とは、「しらつゆ」の意で、秋気も本格的に加わり野草に宿る白露が秋の趣をひとしお感じさせてくれる、というものです。また、秋分とは、秋の彼岸の中日で国民の祝日の1つ「秋分の日」でもあります。先祖を敬い、亡くなった人の御霊を偲ぶ日として親しまれており、この日は春分同様昼と夜の長さがほぼ等しくなります。

<鶏頭(けいとう)>

 鶏頭は、被子植物、真正双子葉類、ナデシコ目、ヒユ科、ケイトウ属に分類される一年生植物で、学名をCelosia argentea、英名はplumed cockscomb、和名はケイトウです。また、えぼしぎく、えぼしまんだら、からい、きう、きうつじ、きうとぎ、きょうとぎ、きょうとぎく、けいと、けいとき、けいとはな、けうどり、けうと、けうとう、けうとぎ、けうとうじ、けうとん、けちゅう、けっし、けと、けど、けとう、けとうげけとぎ、けどぎ、けとし、けとん、ごしきそう、ちゅちゅ、つまべり、つまぐりそう、とうけし、とうけうし、とうけうじ、ととけ、とりかぶと、とりのえぼし、とりのけっちゃか、ひぐばな、まんだら、一朶雲、浪羅著、洗手花杜若、紫冠、鶏冠花、鶏頭花、錦鶏頭、韓藍、セロシア等、たくさんの別名が存在しています。

原産地はおそらくインドと考えられていますが、インド、熱帯アジア、アフリカとも推定されており、日本には奈良時代に中国から渡来しました。

鶏頭は平安貴族の間でも貴重な花で、春に種をまき、栽培されていました。室町時代になると庶民も知る植物となったようです。

なお、万葉集に鶏頭の歌が4首詠まれています。

“わが屋戸に韓藍蒔き生し枯ぬれど懲りずてまたも蒔かむとぞ思う”(山部赤人巻三-584)

この歌では、韓を「から」と読ませていますが、これは韓藍が韓の国の藍の意味だからです。

<いけばなと鶏頭>

いけばなで一般的に言う鶏頭は、一昔前までトサカケイトウが主流でしたが、現在は「ヒユ科」の何種類もの鶏頭が店先を賑わせています。ヒユ属のハゲイトウ、アマランサス、ヒモゲイトウ、アオゲイトウ、そしてケイトウ属のケイトウ、ノゲイトウ、センニチコウ属のセンニチコウ、キバナセンニチコウ等、いけばなではよく見るケイトウの種類ですが、それぞれ改良品種も多く、固有の名前も覚え辛いところがあります。

挿ける場所や、用途に応じ探さなくてはなりません。実際花展や飾り花で珍しいものがあれば写真に収めておきましょう。

ケイトウの種類により伝承の花にも用いられますし、ホテル等の大きな玄関先に迎え花として用いることも可能です。トサカケイトウは大きいものであれば2mになるものもあり、アマランサスは1mに及ぶ垂れ下がる花もあります。特徴を引き出し、造形的に観るのも花を活かす方法の1つです。

水揚げは水切りで十分です。ただし、どんな草木にも共通していますが、水から長い時間あげない、また、手のぬくもりを与えない事が大切です。鶏頭は相対的に葉の水揚げが悪いので注意しましょう。

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