2018年3月の花 <菜の花と雪柳>
2月の立春を迎えると、春の兆しを感じながら春の野菜でもある「菜の花」の言葉を聞くことが多くなります。そして、セイヨウアブラナの畑一面黄色の暖かい景色を思い浮かべますが、春野菜の天麩羅が頭をよぎり、菜の花、蕗の薹、こごみ(シダの仲間のクサソテツの新芽)、タラの芽等々の食材が舌を楽しませてくれます。木の実や春を告げる美味しい食材はアクの多いものが多いため、前処理のアク抜きが必須です。だから天麩羅なのかもしれませんね!
≪菜の花≫
菜の花や月は東に日は西に(与謝蕪村)
菜の花は、江戸時代から俳句などにも詠まれ、春の風物詩の代表とされています。通常菜の花、菜種、油菜、花菜、菜花、などと呼ばれているのは、アブラナ、カラシナ、セイヨウアブラナなどで、いずれもアブラナ属の植物です。この属は30~40種がユーラシアに広く分布し、いくつかの栽培種が日本に伝わっています。
アブラナは、種子から油を搾り行燈(あんどん)や燈明(とうみょう)の灯油(いわゆる菜種油です)として広く用いられていました。現在油を搾取しているのはセイヨウアブラナですが油菜の名前はそのまま使われています。
なお、同じアブラナ科の植物である蕪(かぶ)も中世ヨーロッパでは搾油材料の1つとされていました。日本でも古く縄文時代の遺跡からも見つかっています。白菜もこの仲間で、栽培は日清戦争後です。また、アブラナの類でキャベツは明治時代以降、第二次世界大戦以降にブロッコリーやカリフラワーも食卓に上るようになりました。
<いけばなと菜の花>
いけばなで菜の花といえば「上巳の節句」、桃の節句ともいいますが、優しい色の桃の花に春の陽射しを感じる暖かな色の菜の花を添えて雛段を飾ります。
菜の花を添えることで大概の花は明るく暖かなものになります。ただし、チューリップなどと同じで、茎が上に向く習性があるのであまり斜めの角度でいけない方が良いです。
親葉は大きめの葉で縮れがたくましく、おおよそ花茎を伸ばす前は何の葉かわからないような感じです。造形手法などでこの葉を活かすと面白いのではと思います。
水揚げは水切りか切り口をアルコール材に浸すことで行います。。
≪雪柳≫
雪柳(ゆきやなぎ)は、被子植物門、双子葉植物網、バラ目、バラ科、シモツケ亜科、シモツケ属、ユキヤナギ種に分類される落葉低木です。学名をSpiraes thunbergii、英名をThunberg’s meadowsweet で、こごめばなと呼ばれることもあります。また、早春の頃、枝いっぱいに白い花を付けるところから、中国では噴雪花ともよばれています。ちなみに和名の雪柳は葉の形がヤナギに似ているところからつけられました。
高さ1~2m、葉は線状狭卵形で長さ2~4cmで、大雨が降って増水すると水没して濁流に洗われるような岩の割れ目等の川岸に自生しています。木が茂る山の斜面では日陰になって枯れてしまうらしく、滅多に生えていません。
4月になると枝にやや密につく散形花序に2~7個の花が集まってつきます。
<いけばなと雪柳>
雪柳は現在では1年中市場に出回っている便利ないけばな花材の1つです。春先から白い花をつけて一見優しく咲いてくれ、群がるとその名の通り雪の塊の様に春の陽に眩しくなります。そして花が終ると緑の優しい動きの小枝が風に揺れ、秋には紅葉が目を楽しませてくれ、紅葉が散るころには枝に花芽がついていてちらほら咲きます。冬には早く咲かせたユキヤナギがいち早く春を運んでくれ、このようにいけばなの花材としていろんな顔の雪柳を楽しめます。
一種で枝の動きを利用する表現も多くあり、もちろんその色だけを表現することもできます。また、大きく挿ける時は時節の木花を霞むように見せることもできます。
伝承の花では、白花に分類されることから寄せいけで体や葉の時期を含め三重切りの上口に横姿を挿けることもあります。小手毬などと同様、枝が立つ姿より横になびく姿の方がより自然観があります。
なお、雪柳の特徴でもありますが、枝先まで硬く自由が効かないので自然の姿を活かすことが望まれます。花屋さんから頂く雪柳にも種類がありますが、葉が柳葉の紅葉した雪柳は特に美しいですが、揉めにくく、折れやすいものです。丸い小さい葉の雪柳は揉めも効きやすく、先端まで優しさのある動きをします。
今日の雪柳としっかり対話し、今日の雪柳の美を表現しましょう。
水揚げは水を切らない事で十分揚がりますので切り口を砕くようにします。
photo by 和椛山水 on Flickr