表題:五節句 七夕の花
日時:平成27年8月8日
於 :シンフォニーホール
未生流夏季講座の一環として、五節句の中の七夕の花をいけました。当日は、舞台上にて七夕の節句についてお話しする予定になっていましたが、進行上の都合により1分半で行うこととなり、全てを網羅できなかったことが残念です。なお、五節句の七夕については2013年7月のコラムでふれておりますので割愛いたします。
七夕の起源は、日本古来の豊作を祈るお祀りと、中国から渡来の乞巧奠(きこうでん)や仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)等が集合したものと考えられます。五色の短冊を笹に結ぶのは、笹が祖先の霊が宿る依代(よりしろ)とされているからです。
七夕の花として、笹の他に竹が生まれて三ヶ月目で春を迎える事で竹二本三枝五節を挿けると説明されている書もありますが、これは竹が、祖先の霊の依り代としている事が影響しています。乞巧奠にちなんでか、字の上達を祈念してイモの葉に残る露で墨を摺ったもので、梶の葉七枚に歌を書いてたむける等の行事もあります。この行事の情景がうかぶ歌が新古今和歌集にあります。
七夕の門 渡る船の 梶の葉に いくあきかきつ 露のたまづさ (俊成娘)
(彦星が織姫に逢いにゆくために天の川を漕ぎわたってゆく舟の舵、その梶におりる露のように、わたしはどれほどの秋ごとに梶の葉に書きつづけたことであろう、露でつづるはかない手紙を。)
なお、この歌を詠んだ俊成娘は、女流36歌仙の一人であり、若くして才能が見いだされ祖父である藤原俊成の養女となった人物です。
この日の花材は、秋草から尾花、撫子、女郎花、藤袴、竜胆、山ウド、秋明菊、秋海棠、千紅花火などを用意しました。
水揚げは夏の時期は少し難しいですので、心配な場合は、酢か酢塩を使うか、煮沸すると良いでしょう。秋草ということもあり、本格的に秋を迎えると良く揚がってくれます。
秋の涼感を野の花に求めていけた作品です。
どの花材も丁寧にその花材らしさを求めながら、より風情豊かな景色を表現しなくてはなりません。形を崩す事が自然に近いと考えている方も多いようですが、自戒の意味を込めてですが、そこまで自然を見る目と表現力が上達しているとは思いません。まずは格花の形を借りて丁寧に表現して頂きたいものです。
いけた花の景色に、自然に見る秋の姿を感じる事が出来れば幸せですね。