6月は、よく見かける黄色い花を沢山咲かせる美容柳(びようやなぎ)をご紹介します。
美容柳は一見、金糸梅(キンシバイ)と間違えやすい花でもありますので、この2つの花を比較しながらご説明いたしましょう。
この2つの花を様々な点で比較してみましたが、下表のとおりほぼ違いはありません。
双方ともに黄色の5弁ですが、美容柳の雄しべは長く、数多くあります。葉が柳に似ているところから美容柳と呼ばれていますが、分類のとおり柳の種類ではありません。また、金糸梅はその名前のとおり、梅に似た咲き方をし、葉は楕円形で対生しています。
なお、オトギリソウ科の植物は世界中に分布し、50属1000種に及ぶ比較的大きな科です。中には20メートルにもなる高木のテツザイノキ、テリハボクの様に海岸林を構成するものや、マンゴスチンの様に熱帯果樹になるものもあります。
オトギリソウ(弟切草)とはあまり良い名ではありませんが、故事から付けられた名です。江戸時代の百科事典「和漢三才図絵」にはその名の由来が記されています。
桃山院に時代(10世紀頃)晴頼という鷹匠がいました。神業ともいえる技術の持ち主で、鷹が傷を受けると、ある種の草を用いてたちまちに治してしまいました。晴頼は、その薬草の名前を秘密にしていましたが、弟が密かに漏らしてしまい、晴頼は大いに怒り、あろうことか弟を切り捨てました。これによりその薬草が鷹の良薬であると知れわたり、弟切草と名付けられた。
金糸梅の葉や花、茎を乾燥させた物を煎じて飲むと強い利尿効果があるとされていますが、くれぐれも素人使用は避けて下さい。
<いけばなと美容柳・金糸梅>
いけばなでは、学名のヒペリカムと呼ばれる先端に6mmほどの球体の実をいくつか付けるクリスマスや正月に使うものがあります。学名のヒペリカムとビヨウヤナギやキンシバイとは同種のものであることは分かりますが、オトギリソウ科の植物には多数の種類がありますのでどの種類か定かではありません。また、どちらかといえば美しい黄色い花より、緑の実や赤く色づいた実を使うことの方が多いです。
花材の生態を知ることは、取り合わせにも影響があります。木本であるなら取り合わせの上で留に使う事は難しいことがあります。つまり、出生を知ったうえで取り合わせる花材を考えなくてはなりません。山里水の順位に基き、木物、草物、水物の順位を間違えないようにして下さい。山山里なら木物の出生からの大きさに注意を払いますし、山里里なら草物の出生を知る必要があります。加えて色の順位、白、紫、黄、紅、赤を考え、取り合わせます。
生きている植物を最後まで美しく表現する事は、いけばな家にとって一番大切な事です。
先ずは活かす事を考え、ひと時でも長く美しい姿を表現して下さい。
Photo by TommyHAGA on Flickr