芍薬は、ボタン属草本類の総称で、ユキノシタ目ボタン科ボタン属シャクヤク種に分類される被子植物であり、亜種や変種を含めて30数種類が知られ、日本、中国、シベリア、ヨーロッパと米国の一部に分布しています。学名をPaeonia lactiflora、別名には夷草、夷薬、貌桂草(かおよぐさ)、綽約、ぬみぐすり等があります。また、牡丹が花の王と呼ばれるのに対し、芍薬は花の宰相と呼ばれ、花言葉には恥じらい、謙虚、思いやり、生まれながらの素質、等があります。 冬芽が根上に残る宿根草(多年草)で、花は5月中旬ごろ咲ますが、花市には3月下旬ごろから出回ります。花茎は40~80cm、花弁は10 枚程で6~12cm程の大きさの花を咲かせます。花の種類も多く、一重、二重、三重、八重など様々で、色は白からピンク、赤、紫等がありますが、珍しい黄色(牡丹とシャクヤクの交配種)もあります。 中国では、古くから消炎、鎮痛や婦人病の薬とされ、現代でも芍薬甘草湯という漢方薬に配合されています。 観賞用に栽培されたのは3~5世紀で、すでに隋、唐代(6~10世紀)には多くの品種が作出されていました。その後、宋代(10~15世紀)になると揚州を中心に栽培され、明、清代(14~20世紀)には北京を中心に数十品種が売買されていました。ヨーロッパでは、15世紀にオランダシャクヤクが観賞用に栽培され、18~19世紀に中国の芍薬が入って改良され、花形が豊富な洋種シャクヤク群がつくられました。日本には薬草として平安時代までに伝わったようですが、観賞用として広く栽培され始めたのは桃山時代になってからです。そして、江戸時代前期の「花壇地錦抄」(伊藤伊兵著;1695年)には、100以上の品種が挙げられ、これが明治時代になりますと、牡丹で知られる大阪府池田が栽培の中心になりました。
日本の山地に生育するヤマシャクヤク、日本や中国に生育するベニバナヤマシャクヤク、フランスからアルバニアにかけて生育するオランダシャクヤク、ヨーロッパ、カフカス原産のホソバシャクヤク、ヨーロッパに分布するパエオニア・マスプラ、中国西部に分布するパエオニア・ウェイッチイ等の品種があります。これら以外にもほとんど不可能とされていた牡丹とシャクヤクの交配種など、様々な雑種が作出されています。
<いけばなと芍薬> いけばなでは、4月に入ると稽古花として多く出回る事もあってよく手にするものですが、 花が大きいためあまり多くはいけず、5輪か7輪くらいが美しいものです。小花の場合は11本も挿けても良いと思います。 葉の大きい物や適当な所に付いてない場合、用や留の葉を別に加えなくてはなりません。数多くある時は良いのですが、数が限られている時は留や用添えの花を切る時に葉を花茎に残す様に気配りします。
器は水盤でも寸渡でもいけますが、寸渡の場合は用と留の葉をどのように入れるか考えて下さい。用より先にいけて美しい物かどうか?また、留の葉は大きさやいける位置はどうかを考えなくてはなりません。揉め方(曲げ方)は、茎を縮めるようにします、茎を潰さない様に注意して下さい。 水揚げは、あまり必要ありません。いけている間に花弁が音を立てて咲くこともあります。この様に大きい花は、格先に咲いたものをつかわず、用添えや体前など懐になる所へ配します。 体用相応の巻の「紫陽花挿け方の心得」に準じ花を選んで下さい。