2021年9月のコラム「華道玄解」 閲覧18 荒木白鳳著
毎年の暑さに慣れる事は出来ませんが、未だ耐える事は出来ます。今年は、この状況下にもかかわらず行われたオリンピックが終わり、パラリンピックへと期待が高まります。
スポーツが感動を与えてくれるのは、どんな状況下においても変わりませんし、素直に頑張る人を応援したいものです。
さて、暦の上では秋を迎え、いささかではありますが、朝夕の涼しさを感じる気がします。
改めて思いかえしてみると、今年は初めての体験を何度となく味わう事が出来て、我ながら驚きを覚えると同時に、周りの人達に感謝する次第です。
私だけでは絶対出来なかったHPへのコラムももう10年が経ち、書き溜めたコラムの数も相当なものになりました。千里の道も一歩より、塵も積もれば山となるとはよく言ったものです。加えて今年3月からは何と「オンライン伝書講義」を始めました。コロナ禍の昨年からよく耳にするようになったオンライン講座ですが、まさか自分がオンライン講座を始めるとは想像にもしていませんでした。また、7月のNHKラジオでの日曜カルチャーにしても、対面でない講座、しかも1人で一方的に話すことは今まで経験がなく、不安もありましたが、なんとか全4回終えることができました。また、未生流では8月1日にオンライン夏季講座があり、こちらにも出演しました。若い頃にテレビの番組に出演したことはありますが、かなり昔の事でしかも当時はアナウンサーの方のサポートがありました。
今年は、内容はともあれ、オンライン講座が実現できている事に驚きを感じています。周りの助けがなければ「無」であるはずのことが、今進められていることに感謝です。
さて、国立図書館から閲覧が許されて、皆さんにご紹介するべく初めて17回が過ぎ、今回から下巻として「養の卷參考資料」へと進んでみたく思います。NHK文化センター青山では、毎月解説をしており、すでに12回を数えます。
時代相応の言葉で、感じ取るのに難しさはありますが、今の自分なりに解釈しています。時代を経て又その時の自分が読む事で、より深く感じる事が出来るのではと思います。
この機会に、触れる事が出来るこの書に対しての期待感は、新たに推理小説を読み始めるような心地がします。
「華道玄解」『養の卷參考資料』から、まずは序文を紹介します。
“夫れ宇宙の生物有情無上に至る迄悉く養 (やしなひ)あるが故に其の命脈を保つ。而して其性を養ふものは理。其体を養ふは食(しき)。是即自然の妙理なり。食理當を得ざれば万物成長なす事難し。人倫の道自ら尊卑を別ち君臣父子の差別あり。君仁慈を下して臣を養ひ、臣は其恵を受けて君の心に随ひ以つて報じ、父母は恩愛を加へて子を養ひ。子は其の愍を受けて父母の心に随ひ以て報養す。禽獣虫魚の類も亦斯の如し。華道に於て草木に養ひを施す所以は軟弱の花葉を美壽たらしむるため、其容姿を調ふるは其の本性の缺を補ふ所以なり。一つは草の質を美化し、一つは其の性を滞化す。是俱に養の一法なり性質兼養なすを以つて即ち養の本意とす。”
この序文では、養(やしない)の意味を説明しています。
未生流挿花において、何よりもまず草木の養をあげています。花を挿けるとは活かすことであり、見た目の美しさだけを求める物ではないことを物語っています。
次回は養之卷參考資料の『養素』を読み進めたいと思います。
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