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未生流東重甫

「華道玄解」荒木白鳳著 閲覧23

「華道玄解」荒木白鳳著 閲覧23 2022年3月のコラム


3月を迎えると、春の便りが多く届くようになりました。暦の上では「仲春」、春真っただ中と云う事になりますので花の便りを聞くのは当たり前かも知れません。

お正月を新春といって祝い、春一番に咲く梅を春の魁けと称して貴び、桃は春の兆しとして親しみます。春は何事においても第一歩を踏み出す、いわゆる、ものの始めになる時節です。この思いを正月に持ってくるのか、三月又は四月に感じるのかは、その与えられる境遇によって違うものです。

人それぞれが感じる出発点には、新たに進む時点であったり、進行過程のある一時期であったりと様々ですが、たとえどのような春でも、夢がある季節には違いありません。


陰陽五行でいう春は、木であり、東であり、青であり、ものの初めで「動く」「生ずる」と考えられます。心も身体も陽氣につれて、これから動く出発点でもあります。老いも若きも、初めての事であっても、慣れ親しんだ事であっても、迷う事無く最初の一歩を踏み出す事の出来る時節なのかも知れません。老子の言葉を借りていうなら


「止りさえしなければ、どんなにゆっくりでも進めば良い。」


「何事も楽しんでやりなさい 楽しんでやる事で思わぬ力が発揮されるものだ」


ではないでしょうか。何をするにしても、何かをする「意志」が肝心で、努力する過程が肝心です。


1年の巡りを大切に感じて、全ての人に訪れるそれぞれの季節に感謝し、楽しみたいものです。楽しむことによって次に訪れる春には新たな「最初の一歩」を踏み出せます。


さて、前回のコラムでは、「華道玄解」『五行の所囑と解説』から、『土に属する部』の閲覧を進めました。今月は続いて、五行「木火土金水」から『金に屬する部』を読み進みます。


『金に屬する部』

方に曰く西 

西は陰中陽の位。金の本處なり。環境の理陽は北水。子より生し。卯に盛んにして。陰陽交午して午に極まる。影は蛭に生じて。酉に盛んにして。子に去来る。故に。カネは陰氣盛んなる處に生ず。陰盛んなるは西酉の方なり。故に金は西酉に屬す。金の本位は西なり西方を金氣生ずる處とし金の位とす。亦陽は万物を生出する事を主と原文からは“す”が抜けているのではと思います)る陰は萬物を固化す則堅質ならしめ。消化ならしむ。金は物を堅固ならしめ消化す「生化」は自然の理也東方の木は生を主とし西方の金は化を主とす


星に曰く太白

太白は禁制の名なり。甲寅の日晨に東に出て二百四十日の間見へ四十日間入りて見へずして、亦西方に出て。二百四十日間見へ又三十五日入て見へず。亦東に出ると云。俗に謂明星是れなり太白星は夫將の象なりと云ふ。亦秋申酉七十二日此星治むとあり。


色に曰く白

五色の中。白色は金の色とす。金に數色ありと雖も白を以つて本色とす。白色は純潔の色。亦悔悟の色とす。亦死滅の色とし亦清浄の色とす。金は万物を碎破す。萬物像滅すれば必ず白に歸す故に金に屬す


氣に曰く魄(はく)

生物死滅して氣体離散の時空中に歸する者を魄と云ふ。魄は則陰に屬する氣なり


卦に曰く兌(だ)

兌は八卦西金の名なり。金の卦を兌と云ふ兌は説なり亦澤(たく)の象なり。澤は池なり水を留め受ける意なり。兌は口を開き陰氣を受入るゝ象なり。受留る意なり。亦少女の意にとる。少女は美麗なり静なり。金は秋なり靜也果葉美麗なる時なり


人に曰く義

五常の道。義は約を守る意なり。堅固の意なり。金は堅實なり故に義は人倫の道を堅固に持つを義の本分とす。亦私利を顧みず公衆の爲めに盡すを義とす


時に曰く秋

秋は萬物皆氣靜になり陰氣漸く定まる草木の果實熟し固まる。その精は根に下り外部の色皆老衰の色を現す。金氣は萬物の命を枯死せしむ。故に四時の中に秋は金に屬す


神に曰く虎

虎とは空中四神の中西方の護神の名白虎と云ふ故に白の字を略して虎と謂ふ


臓に曰く肺

五臓の肺は氣の本なりと云ふ。治筋之れより出ることあり。亦魄の居る所と謂ふ。呼吸消息自然に清濁を司ると。其情。憂なり甚だしく憂ふれば。肺を傷ると謂ふ


味に曰く辛

五味の中。辛は金の本味なりといふ金質(鑛礦)諸味を含むと雖も辛は本なりと謂故に辛過れば命を損ず。是れ其證なりと謂ふ


數に曰く四九

四は金の生數庚の位。九は金の成數則辛の位なり。此の數に成熟の氣あり。滅亡の氣あり。清浄の氣あり


音に曰く商

五音の中商は齒の音と云ふ五十音の中。サ行(サシスセソ)の音齒と舌との和合音なり。此の音に知謀の氣あり。亦成就の意あり理解の意。衰滅の氣あり。破壊の意あり


以上が『金に屬す部』ですが、一般的に金は秋には実が熟して硬くなり、強くなるとして考えます。

例えば、桃太郎や金太郎の話はご存じかと思いますが、五行で云う金に属す「強い」をイメージしたおとぎ話です。桃太郎は白桃から生まれ、鬼を退治する家来は、金に属す十二支の中の猿、酉(とり)、犬で、強い家来を意味しています。

また、日本の節分での鬼や豆は五行の金に属します。豆を煎るのは、五行相剋でいう火剋金」で「火は金に勝つ」という考えからです。亦鬼の姿は、鬼門が丑寅の方角であることから、牛の角と寅のパンツをはいています。五行は庶民にしっかり根付いた思想であって、習慣にまでなっています。

ちなみに、五行を順にいうと、「木火土金水」で、その順序は五行相生からの順で、木生火(もくしょうか)は、木は火を生むと考え、火生土は、火は土を生むと考えます。

歴史では相剋説の方が古く、紀元前4世紀ともいわれています。相生説は紀元前1世紀頃と考えられます。五行を相剋の順にいうと、「木土水火金」となります。思想家鄒衍(すうえん)依るものです。

なお、陰陽五行につきましては、2018年のコラムで紹介していますのでご興味のある方は覗いてみてください。


次回のコラムは、華道玄解「養の巻參考資料」『五行と所囑と解説』の中から“水に屬す部”に進みたいと思います。


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